前回からの続き、
ティアの社長冨安徳久氏(正確に言うと社員の方が分担して書かれていますが)の最新刊である
葬儀エピソード集の話です。

さよならのブーケ 大切な人の最期にしてあげたい11の物語さよならのブーケ 大切な人の最期にしてあげたい11の物語
冨安徳久=編著

かんき出版 2012-05-23
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まずは軽いレベルのお話から。

葬儀のエピソード本の楽しみ方の一つは
スタッフのテクニカルなほころびを見つけるところ。
(すいません、人が悪いもので(^^;))

○お寺様にお経をあげてもらったからセレモニーになったと言っておきながら
天国に逝く」発言を連発(P104)

○これも不思議なことなのですが
ご家族を大事にされてきた故人様というのは、
火葬された後、「お舎利様」(いわゆるのど仏)が出ることが多いのです。(P159)

↑気のせいです。

逆に出なかった人は・・・という誤解を生みかねない
軽率な発言だと思います。

○お葬式で流す音源を求めてレンタルショップを片っ端から探し回る(P23)

アイチューンストアを使えば5分で終わりますよ。

○葬儀にアジサイを用意しようと思い立ち、
通夜が終わってから花屋を一軒一軒探し回る。(P84)

↑もっと早く準備すべきでしたね。
それにしても名古屋って21時から探し出して
10軒も花屋さんが開いてるんですね。
それ以前に電話って便利なものがありますから、
これからは事前に花屋さんに電話して在庫を聞けばいいのでは。




・・・とからんでみましたが
もしかすると何か書かれていない事情があるのかも知れません。
それに従業員の真摯なマインドが伝えるには、
非効率的な業務フローの方が
逆に効果的な場合もありますしね。

女の子

さてこの本の
最後のエピソードは冨安徳久氏自身がお書きになっています。

以前
冨安徳久「ぼくが葬儀屋さんになった理由」を私が認めない理由
という記事で述べた
「冨安氏が勤める葬儀社の電話番号はなぜか知ってる女の子」
の話が、再度描かれていました。

ちょっと意地悪な(^^;)検証をしてみますね。

女の子が電話をしてきたのは
故人が生前(なぜか)冨安氏の勤める葬儀社のPR用ハガキを
電話に貼っていたからなんだ・・・
ふーん(-。-)y-。○○○ ○ 

「ぼくが葬儀屋さんになった理由」での描写と本書の描写とでは
内容がいろいろ変化しています。

・大家さんは女の子を心配する善人→家賃が入らなくなるのを心配する悪人
・遺影写真として母子2人で写っているものを使用→娘と写っている写真は見つからず証明写真を使う
・女の子の今後のことは、お坊さんが役所と話をつけることに→冨安氏が民生委員に相談

いや、だからこの話自体の真偽がどうこうって
決めつけてるわけじゃないんですよ。
そもそも前作は「フィクションも含まれる」話だったわけですし。
指摘されているのに不注意、とは思いますが。

それにしても最大の謎は
女の子も冨安氏もなんで初動で
救急車呼ばなかったんだろ?

女の子は動転していたっていう説明はなり立つが冨安氏の場合は・・・

私も同じ経験(故人死亡の第一報を受けた)がありますが、
まず救急車を呼びました。
亡くなっているといっても素人の死亡判定ですし、
呼吸停止だけなら蘇生の可能性もありますから救急車を呼ぶのは当然です。
その時私は救急車より自宅に2分早く着いて、
救急隊員を故人の部屋に誘導することになったのですが。

この話の場合
結構時間が経ってから呼ばれた警察は不審に思わなかったんでしょうか。

百歩譲って冨安氏に電話する前に女の子が救急車呼んでいたとすると、
救急から警察にも要請入って検視が行われていたはずだと思うのですが。
名古屋の監察医制度はシステムが違うんでしょうか。


と、いろいろ細かいツッコミをしてきましたけど
ここまでは、導入部です。
いよいよ本題へ。
お金

冨安氏が自腹を切って無料で葬儀を行ったことに関して
考えてみます。

これは価値観の違いと言ってしまえばそれまでですが、
私は無料でやったことに対し、賛同しません。

このての話はよく美談として紹介されるのですが
(例:「葬儀秘録」を読むと名古屋でティアさんが躍進する理由が分かる
もし自分のやっていることに矜持があるなら、
タダでやるべきではないと思います。

値引きじゃなくって、
担当が頭を使ったり、汗をかいたりすることで
遺族にとってのバリューを増やすのが本筋。

「お金がなくて葬儀をすることができない(中略)わずか3パーセント5パーセントの人たちを助けるべき」(P183)
という発言も、
葬儀屋の端くれとして気持ちはよく分かります。

しかし、 おひとりさま問題 をはじめとした今後の日本の社会環境を考えたときに
これは一企業の一スタッフのボランティア精神では
そもそも支えきれない問題なのではないでしょうか。

と偉そうに言いつつ、
私もかなり近いことはやったことがあるんですよね。(^^;)
タダじゃないけど。
ありがたいことに理解のある上司だったので。

葬儀担当者をやってれば、
義を見てせざるは勇無きなりというか
情が理を超えてしまうときって、よくありますよね。

しかしこの場では私は理の方を主張します

株

もう一つ重要な問題です。

上場企業の社長が
顧客セグメントを絞らない。ボランティアも辞さない」
ってことを宣言するのは一歩間違うとすごく危険だと思います。

仮に大株主のY氏が良くても、
一般投資家が同意するかは疑問ですし。

ただね
上場企業の社長になっても現場のマインドを持ったままで
こんな危うい発言をしてしまうことが
冨安氏ってカッコイイと個人的には思ってしまうんです。

このあたりはずっとぶれないですよね。




(追記)
著者として本を出版した以上、
本の購入者に作品を論評されるのは当然予想されていると思います。
しかし一方で本職の物書きでない人にとって、
いろいろ論評されるのは厭なものだというのは私も十分理解しております。
この文章は別に著者を困らせることが目的ではありませんので、
要望が有れば希望箇所を削除するのはやぶさかではないことを、
お断りしておきます。


<2012年07月19日>記載