今回ご紹介する本は
 
あなたはなぜ「嫌悪感」をいだくのか
「嫌悪感」をいだくシステムを心理学者が科学的に説明した本、
なのですが・・・

全体的に嫌悪感という感覚的なものを論じているということを割り引いても
結構な分量の論文を引用しているにも関わらず
唐突に強引な論理展開が行われます。
「えー、そうかなぁ」っていう感じです。
悪い意味で竹内久美子的、といいましょうか。

とはいえ、嫌悪感を及ぼす重要なファクターの一つが
「死を連想させる」ものという説は、その通りだと思います。

例えば
見ず知らずの人の体液に嫌悪感を感じるのは
→病原菌→感染→死
という連想が背景にあり、嫌悪感は人間の防衛本能に基づいている
というように。

日本人が穢れ(けがれ)と呼ぶものと根底はいっしょ、
と言えるのではないでしょうか。

で、嫌悪感を感じる職業と言えば葬儀屋(^^;)
ま、ダイレクトに死を連想させる職業ですからね。
予想通りこの本ではアメリカの葬儀屋へのインタビューが掲載されています。
(P207〜)
それにしても「人間社会で最もタブー視されている職業」って紹介はひどくないですか。
なんか日米共通で嫌われてんのね(>_<)

でまた、この葬儀屋歴50年というオヤジが
人のいい職人気質キャラ、っていうのが
いかにもなチョイスで、これも日米共通なのね。

で著者の論理展開があいかわらず強引で。

葬儀屋のオヤジが葬儀経営者の息子の自殺率が高いと発言した
→葬儀屋は24時間対応のハードな仕事だから自殺リスクを高める
→死とともに暮らしていると死への恐怖と謎が薄まる
→落ち込んだときに死を恐れるに足らぬ選択肢と考えてしまって葬儀屋の息子は自殺する
→裏付けとしてホロコーストの生存者は自殺率が高い

このあたりの論理展開の強引さというかアバウトさはひどいです。

そもそも葬儀経営者の息子の自殺率が高いっていうエビデンス(証拠)が
どこにも提示されていません。
ちなみに日本国内では、そんな話は聞いたことないです。

確かに職業差別でいじめられたことが引き金で・・・というケースはないとは言えませんが
それは死が日常にある生活をおくっていることとは無関係。

恐らく実際は逆。
葬儀屋(とその家族)であることは
むしろ自殺を抑制すると思うのです。

なぜなら
葬儀屋(とその家族)は自死(警察署のコンクリートの床に転がされる遺体や、遺族の慟哭など)が引き起こす現実を、一般の人より知っているので
むしろ命を大切にするはずだから。
(一方で自殺者が命を粗末にしている、っていう言いぐさにも私は与(くみ)しませんが。
当事者にとってそんな単純なものではないと思いますし)

ホロコースト生存者の自殺のケースは
肉親を殺害されたことによる精神的不安定が主な原因では?
それさえなければ、
奇跡的に生き延びることが出来たんだから肉親の分も長生きしようとか、
命を粗末にすまい、ってという考え方をしてるはず。
棺

さて
最後の章で著者は嫌悪感のメカニズムを理解すれば
余計な嫌悪感を抱かずに済むと言います。

これは一理あると思います。

死を恐れている人ほど葬儀屋を嫌う。
そして葬儀の経験が無い人ほど葬儀屋を嫌う。
という傾向があるのではないでしょうか。
(↑まぁ、これもエビデンスはないんですけどね) 

葬儀業界もかなり変わったので
一度葬儀を経験して実態というものが分かってもらえれば
考えを変えてくれると思うのですが
こればっかりはねー。

追記 「葬儀後のセックスというモチーフがよく映画や本に登場するが、
これは恐らく生を肯定しようとする欲求から発しているものであろう」
っていう記述も、どうかなぁ。
生命の危機状態で発情するというんなら分からんでもないんですが。
「おくりびと」にもそんなシーンあったけど、現実は違うと思います。


<2013年01月28日>記載