今回ご紹介する本はこちら。

殉愛 百田尚樹
殉愛

百田 尚樹 幻冬舎 2014-11-07
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by ヨメレバ

実は葬儀屋さん目線でこの「殉愛」を読むと
ちょっとだけ不自然に感じる部分が何カ所かありました。
その後アマゾンのレビューを読んで
内容の真偽を巡っていろいろ意見があることを知りました。

やしきたかじんさんが亡くなった直後から始まった報道に関して
半年程前こういうツィートをしました。
影響力のある誰かが亡くなることによっていろいろもめる場面は
仕事柄いろいろ見てきています。
そういう状況では誰が善で誰が悪という判断を私は行いません。
そこは基本的に部外者には分からない部分だと思っています。
特に夫婦間のことはさらに外部からはわかり得ない部分です。

そこを踏まえた上で
葬儀屋さん目線でのリアリティという観点から
「殉愛」で不自然に感じた部分を述べておきます。

酒

この本に登場する葬儀屋さんは故人の写真を撮ることを優しい声ですすめた、
として好意的に書かれています。
しかし病院から自宅へ搬送するとき
ご遺体を納体袋(腐乱死体や警察業務などの際、遺体を収める袋)に収めたため
搬送途中で奥さんが「息が苦しそう」ということで
こっそり袋のファスナーを下ろす描写があります。
一般的な病院業務では布担架は使うかもしれませんが
納体袋はコストもかかるうえモノ扱いの印象を与えるので、通常使いません。
もちろん普段から使っている葬儀社は存在しない、とはいえませんが・・・
あんまり良い葬儀屋さんではなかったのかもしれません。

ちなみにたかじんさんの葬儀は「殉愛」の中では密葬と記されていますが
自宅から直接火葬場に向かっているので実質直葬であったと思われます。
  
次に棺の副葬品として
時計、DVDやテレビのリモコンを入れた、というところがあります。
棺に入れたのは「殉愛」の記述の順番では火葬炉前ってことになりますが、そうだとすると
葬儀屋さんか火葬炉職員が絶対止めたでしょうから
自宅出棺前の話なのでしょう。 
拾骨の時にパーツ(特にリモコン)が残らなかったのでしょうか。
 
火葬は桐ヶ谷斎場だったようです。
たかじんさんの前妻が拾骨直前に
(火葬炉からお骨を引き出した状態は)「人体模型みたいでグロいで」と言った後、
娘がお骨を見てあれっ違う(結構バラバラな状態になっている)と驚くシーンがあります。

これは東西で主流の火葬炉のタイプが違うためと思われます。
関西で近年導入されている火葬炉は、棺を収めた部屋の奥にさらに火葬する部屋があり
骨格の構造を保ったままお骨にすることができるタイプ(台車式)なのですが
都内の民間の火葬炉は棺の下にザル状の網があり
そこから下に落ちたお骨を集めるタイプ(ロストル式)だからです。
身内が「人体模型」と口に出すことにリアリティはないのですが
お骨の仕上がりの違いに驚くのはリアリティがありました。

「殉愛」全体の感想としては不自然なところもあるけど
ウソってほどじゃないという印象です。

今後真偽の程が明らかになるかどうかは分かりませんが
少なくとも今の状況を故人は望んでいなかったでしょう。
早く沈静化して
安らかに眠られることを祈ります。


(追記)
「殉愛」に反論する形で

百田尚樹『殉愛』の真実
百田尚樹『殉愛』の真実

角岡 伸彦,西岡 研介,家鋪 渡,宝島「殉愛騒動」取材班 宝島社 2015-02-23
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by ヨメレバ
という本が出版されたようなので
補足です。
この本によると
「たかじんさんの前妻が拾骨直前に
(火葬炉からお骨を引き出した状態は)「人体模型みたいでグロいで」と言った後、
娘がお骨を見てあれっ違う(結構バラバラな状態になっている)と驚くシーン」
に関して前妻は否定されているようです。


<2014年11月24日>記載