前回の記事
葬儀社のM&Aは難しい 1/2
に引き続き葬儀社のM&Aについて述べています。

さて葬儀社のM&Aって意外と難しいと思います。

M&Aを行なうのは基本的に相乗効果(シナジー)を狙ってのことだと思います。
M&Aの結果、ただ企業規模が大きくなったというだけではダメで
買った方にプラス要素が見込めないといけません。
たとえば売上100億 利益5億の会社が 売上3億 利益1千万の会社を買収して
売上103億 利益5億1千万になっても、これはシナジーと言いがたいわけですね。

上場企業のグループ下に入ったというハロー効果はあんまり機能しないでしょう。
買収された老舗を昔から知る地元の消費者はその辺りの評価はしないと思われます。

次にローカルルール(習慣やしきたり)が違ったりすると
スタッフのスキルや物品の共有化がうまく行かない場合があります。
この点、福島と茨城ではそれほど差はなさそうです。

それから密度の経済ドミナント戦略)が効く場合の
葬儀社の買収はとても有効だと思います。
たとえば従来の商圏内で別の葬儀社を買収するケースですね。 
こういった場合、一番大きいのは商圏内でスタッフを流動的に回せること。
葬儀社は基本的にスタッフ数をミニマムに設定しているので
繁忙期をどう越えるか、が重要になります。
同一商圏であれば
葬儀50件を10人のスタッフで回すより、500件を100人で回すほうが
スタッフの動きを流動的にできる分、効率的なのですね。

また拠点数が多いと
受注時に最寄りのA会館に先約が入っている場合、空いているB会館に回すことで
機会損失を減らして、さらにB会館の固定比率を下げることができます。

ただし今回のような飛び地の買収の場合
密度の経済は効きません。
では規模の経済(スケールメリット)が効くかどうかなのですが
思われているほど機能しないことがほとんどなのです。

まず
ネット系の集客コストが浮くという観点ではどうでしょうか。
しかしネット系集客も地域を限定して行なうことが今や一般的なので
それほど(規模の経済上の)効果は期待できないでしょう。

次に取引上買い手が大手の場合、大量仕入れによる値引きが期待できます。
しかし仏具系や返礼品の値引きは、
もとの単価が安いこともあり意外としれています。
(イオンが日頃言っている、イオンの葬儀はイオンから商品を購入するからコストダウンというのは
実際はほとんど効果が無いと思っています)
花材と棺は比較的価格交渉の余地が大きく有効に思われますが
今回のように飛び地の物件の場合
仮にロジスティックシステムを使って社内で二次流通させても
物流コストが下手にかかってペイできない可能性があります。

葬祭業のように箱(式場)を使ってサービスを提供するような
分散型事業はそもそも規模の経済は効きにくいのです。 
レストランチェーンでも規模の経済が効きにくいのと一緒です。 

前述した密度の経済と後述する範囲の経済を極めることなく
規模の経済を求めることは葬祭業の場合リスキーだと言えるでしょう。 

次に範囲の経済のカテゴリと言えると思うのですが
顧客情報の有効利用ができる、という観点ではどうでしょうか。
葬儀顧客情報を起点に、仏壇や墓石等の販売を行えるというメリットはありますよね。
でも仏壇墓石は流通コストがあり、
墓石は霊園と関係をつくらないといけないという政治的なコストがかかってしまいます。
ということは牛久に進出しても旨味は無いはず・・・
と思って調べてみたらこころネットさん、牛久で墓石販売は以前からやっていたみたいですね。

ただ土地柄墓の新規購入って、戦前から人が住んでいる地域だと需要があまり無いでしょうし
300件程度の葬儀屋さんを買収しても、
顧客リストのボリューム考えるとあんまり効果的とは言えないと思います。
私が唯一知っている牛久市にまつわる情報(^^;)牛久大仏の需要はよく分かりません。
もし牛久大仏の認知度と大仏自体の霊園集客力があるのなら
ますます顧客リストの価値は下がることになります。 
だったらまだ一から葬儀屋立ち上げたほうが・・・とも考えたのですが
牛久葬儀社のサイトを見ると葬儀会館を一つ持っていますね。

この会館持っているという買収メリットはあるかな。
会館を一から建てるのは
ちょうどいい物件が見つからないというリスクと住民の反対運動というコストを背負わなきゃいけないので。
それを考えると穏便に活動拠点を得られるメリットはあるかも。
牛久大仏
 
今回の買収は関東進出の足がかりとして、とのことらしいのですが
ここから南に下る(埼玉エリアに入っていく)のは結構厳しそう。
互助会とJAの帝国の牙城を崩す勝算はあるのでしょうか?
どうもこころネットさんは福島ではJAの下請けをやっているらしいので
埼玉でもそのパイプを使って下請けを主力として地盤を作っていくのでしょうか?

あとリスクとしては互助会は下手に活動エリアを広げると
経産省からの命令で弱った互助会を引き受けさせれるリスクがありそうな・・・
「そこに拠点有るんだからあそことくっつきなさい」とか(T_T)
あ、でもそれが株価にマイナスに働くとすると逆に経産省は命令しづらくなるのか?
って今ふと思いました。
てことは逆にマーケットの投資家保護を盾にとれるから
互助会さんは上場したほうが安全じゃね?
 いや、財務諸表さらすリスクのほうがデカイか(^^;)

それから売上げの下がっている葬儀社は
スタッフレベルもそれなりのことが多いです。
(あくまで一般論であり牛久葬儀社さんのことではありません。)
人はいいけど、コスト意識が薄いとか。
そういう場合彼ら彼女らに上場企業としての意識を植え付けるのは結構難しいでしょう。
事実上の解雇という選択肢もありますが、
属人的な町会やら寺とのパイプも同時に切ってしまいかねないところなので
天秤にかけたときの判断が難しいと思います。
古参社員ほどこの傾向が強いので
この決断でも頭を悩ますところです。 

私個人の意見としては今回の買収は
そんなに筋が良いとは思えません。
しかし買収先の企業規模から考えると
失敗してもそんなにダメージのない投資とも言えます。

多分今回の買収で狙ったのは
投資家に対するアピールではないかと私は思うのです。
上場するとどうしても大きくなり続けることを義務づけられます。
現状維持でそこそこのインカムゲインでは許してもらえないとすると
定期的に花火を打ち上げなければいけない。
それが関東進出と言うことではないかと思うのですが
いかがでしょうか? 

(上記の記事は、こころネットさんの記事をきっかけにして
述べている一般論に過ぎません。
全て私の想像で書いておりますので
投資判断には使わぬようお願いいたします)


<2015年05月09日>記載