最近電通の新人社員の方が自殺されたり、過労死等防止対策白書が発表されたりと
過労死の問題が注目されています。

葬祭業は日本でも有数のハードな職業だと思いますが、少なくとも私の知る範囲で過労死した人の話を聞いたことがありません。
なぜなのでしょうか?
過労死

その理由を述べる前にまず葬儀屋さんの労働実態について説明しておきます。
葬儀社によってもことなりますが、正社員の月間の実働時間は300〜350時間くらいではないでしょうか。
お通夜があるので当然夜は遅くなります。
また人が亡くなるのは24時間お構いなしなので、
夜中に病院にお迎えに向かわなければなりません。
当然夜間勤務をすることになります。
朝出社→お葬式の担当→そのまま夜勤→病院へお迎え→翌日お通夜の担当、
ということで36時間連続勤務ということもあります。
またお葬式は予定が立てられませんので、少ない休日も飛んでしまうことがよくあります。
私は最長3週間連続勤務を経験しました。
葬祭業の多くは家族経営が少し大きくなったくらいの零細企業です。
そのため慢性的な人手不足で労働組合もなく、労働基準監督署の査察もほとんど入らないため、この状態がずっと放置されてきているわけです。

またお葬式はやり直しがきかないので葬儀屋さんの緊張は相当のものです。
そしてお客様は大切な人を亡くして悲しみに暮れている遺族なので
かなりストレスがたまる仕事です。

こんな状況でなぜ過労死が起きないのでしょうか?
囲い

葬儀屋さんで過労死が起きないのは
1フィルタリング
2入社コストと退出コストがかからない
3やりがい
という3つの理由のためです。

1フィルタリング
就職の際、認識の程度の差はあれ、
葬祭業はハードであるということをみんな 分かったうえで応募してきます。
葬儀社側もすぐ辞める人を採りたくないのでハードな仕事であることを念押しします。
そのためメンタル的肉体的に弱いという自覚のある人はそもそも入社してこない、
という採用の段階での十分なフィルタリング(選抜)が行われているのです。
それでも入社してみると想像以上にハードなのですが。

2入社コスト退出コストがない
いい企業に入るためには基本的にいい大学をでなければなりません。
いい大学に入るためには受験勉強に費やす お金や時間というコストがかかります。
そうまでして入ったいい企業が仮にハードだったとしても、多くのコストをかけているので、
辞めるのがもったいないと思ってしまいます。
また日本の社会は一度辞めてしまうと同じレベルの会社に再就職できないことも多いので、
さらに辞めづらくなり、やがて死ぬまで働く人がでてきてしまうわけです。
葬祭業は入社のハードルが低いです。
学歴が問われることもほとんどないため、
入社するために費やしたコストというものがありません。
そのためこれまでのコストがもったいないので無理をして居続けるという人がいません。
またエスタブリッシュメント系の企業に在籍経験のある人もほぼいないので、
退職して再就職先のレベルが落ちることを恐れる人もいません。
そのため葬祭業が合わなければすんなり退職できます。
その結果離職率が高いという問題はありますが、死ぬまで働くという状況は生じにくいのです。

3やりがい
葬祭業ほどお客様に必要とされて感謝される仕事も少ないと思います。
お客様の人生でもっとも ストレスがかかっているときに登場して、やさしく寄り添います。
そのためこの仕事が大好きでやりがいを感じるというスタッフが多いのです。
仕事が好きでやりがいがあれば多少ハードでも堪えられます。
一歩間違うとそのやりがいを、悪条件での労働を受け入れることに利用される危険性はあります。
今のところ賃金はそこそこもらえるところが多いため、
業界全体としては、いわゆるブラックになることをギリギリ免れていると言えるでしょう。

これからはわかりませんが。

以上が葬祭業で過労死が少ない理由です。
逆に言うと
苦労して就職した会社がハードなのにやりがいのない職場だと
悲劇を招くのかもしれません。


<2016年11月06日>記載