今回紹介するのはこの本。
「親が死んだ5分後にあなたがしなければならないこと」
 葬儀実用書?としては売れているようです。
勝因は漫画を多用してさらっと読めるようになっているところではないでしょうか。
ただし葬儀の箇所を監修している三村麻子氏は葬儀式場のオーナーであって
厳密に言うと葬儀屋さんではありません。
そのためところどころ間違った記述があります。
また彼女の存在を知った顛末はこの記事(週刊東洋経済の不思議な記事)に書いてある通りなので個人的に心証は良くありません。

私は以前から葬儀の実用書の良し悪しは
葬儀屋さんの選び方がちゃんと書かれているかどうかである、と述べてきました。

この本はどうでしょうか?

担当者選びがポイントということで
「信頼できる担当者の見極め方」という項があるのですが
そこで述べられている方法のどれもが役に立ちません。
「私ならこうします」という台詞が出てくれば、それだけで信頼できる人物と言えます。お葬式のプロとして自分の意見をしっかり述べる人は〜
遺族に高い商品を選ばせようとしてこう言う葬儀屋さんはけっこういるので、
むしろ注意すべきでしょう。
また自分の価値観を押しつける葬儀屋さんも多いので鵜呑みにするのは危険です。
強いて言えば「〜という理由で、私がお客様の立場ならこうします」と
言うべきじゃないでしょうか。
言葉づかいやみなりがきちんとしている
20年前ならいざしらず、
今どき言葉づかいや身なりがおかしい葬儀屋さんなんてごく一部です。
仮にそんな人に出会えば、常識的にダメだと判断できるでしょう。
わざわざお金を出して本を買ってくれた読者にアドバイスするようなトピックスではありません。
爪

プロ意識の高い担当者はたとえばご遺体を傷つけないようにいつも爪を短く切っている
三村氏が現場の人間ではない(葬儀屋さんとして遺体に触れたことがない)ということが
良く分かる箇所です。
プロ意識が高かろうが低かろうが葬儀屋さんは爪を短く切っています。
そしてそれは遺体を傷つけないようにするためではありません。

葬儀屋さんが遺体に初めて触れるときには、死亡診断書の確認ができないため、
死因がわからないことがほとんどです。
そのためプロ意識の高い葬儀屋さんは遺体に触れるときは感染症防止のために
医療系の手袋をつけます。
また故人が異性の場合、遺族の抵抗感を減らすという意味もあります。
ですから爪でご遺体を傷つけないどうこうというのは関係ありません。
プロ意識の高い葬儀屋さんが爪を切っているのは
単に普通の社会人と同じくエチケットのためです。

一方手袋を付ける習慣のない葬儀屋さんは、
爪が長いまま遺体に触ると自分自身の感染リスクが高まるので、
これも爪を切ります。
別に故人を大事に思っているのではなく、
自分の体が心配なのです。

よって爪がどうこうという話は全く役に立ちません。
困ったことにアマゾンのレビューでは爪の話が高評価でした。
こうやって世間はだまされるわけですね。
御遺族に不快な思いをさせないように着替えのシャツや靴下などをいつも持ち歩いている
これって、葬儀屋さんに今持っている着替えのシャツや靴下を見せろって確認するのでしょうか?
どういうつもりでこれを書こうと思ったのでしょう。

以上のように
この本に出てくる担当者の選び方はどれも役に立ちません。

かといってこの本が他の葬儀実用書に比べて特に劣っているというわけではありません。
葬儀実用書全般が葬儀屋さん選びの適切なアドバイスを行えていないというのが現状なのです。


<2017年06月09日>記載