弔電の文章の選び方・書き方が分からないという方はたくさんいらっしゃると思います。
弔電はめったに送るものではありませんし、受け取る相手の状況を考えると失敗は許されないので、悩んでしまうのも無理はありません。

以前
弔電の安くて効果的な送り方を葬儀屋さんが教えます
という記事を書きました。
この中で弔電の文章について述べた箇所を、さらに詳しく加筆して説明いたします。  

弔電の文章の選び方・書き方の結論

結論から申し上げますと
私がおすすめする弔電の文章の構成は
冒頭と末尾は電報会社の勧める定型文をそのまま使って、そのあいだに故人のエピソードをつづったオリジナルの文章を挿入するというものです。
そのエピソードは故人の人柄と、故人と自分の関係が伝わる内容であればベストです。

この方法をすすめる理由は以下の通りです。

弔電の文章を印刷している紙は、どの弔電を選んでも同じものです。
弔電会社は少しでも売上を伸ばしたいので、印刷した紙をはさむ台紙の種類をたくさんそろえて、より豪華で高価な台紙を選んでもらおうとします。
そして消費者は、頻繁に送るものではないので弔電の相場観は分かりませんし、せっかく送る以上は弔電をアピールしたいと考えて、ちょっと高めの台紙を選びがちです。

しかしお葬式の現場では他の方からもたくさん弔電が届きます。
少々高価な台紙の弔電を選んだとしても大抵他の弔電と被ります
実際の葬儀の現場では台紙に挟み込まれた、弔電の文章が印刷された紙の部分だけを持って帰って、台紙は葬儀屋さんで処分してほしいとおっしゃるご遺族も多いのです。

つまり高額な台紙を送ることは遺族の心に響きません。
心に響くのは弔電の文章です。
弔電とは文章によって遺族に弔意を伝えるものなのですから当然です。
だから台紙は安いもので構いません。
台紙選びに迷う暇があったら弔電の文章を考えるべきなのです。

遺族は全ての弔電の文章を読んでいるのか?

ところで遺族は頂いた全ての弔電の文章に目を通しているのでしょうか?
原則的には全部目を通しています。

お葬式の時には(前日のお通夜の時ではない)いただいた弔電の中から何通か選んで代読する習慣があります。
その時にどの弔電を読むかというのは当然遺族が選びます。

お葬式は出棺時間が決まっているため時間制限があるので、式中に披露するのは本文を含めて全て読むのが大体3通くらい、本文は読まないで名前だけを読み上げるのが5通くらいです。
我々葬儀屋さんは遺族が選びやすいように弔電の台紙を逆側に折り曲げて最初から文章が見える状態で積み重ねてお通夜の後に渡します。

最初選び始めた頃は、遺族は本文と送り主の名前の両方を丁寧に確認しているのですが、途中から紋切り型の定型文が続いていること気づくと本文を読み飛ばして名前だけを確認し始めます。
このあたりでほとんどの弔電の文章が、定型文の順列組み合わせであることに遺族は気づいています。

ただそういった中にオリジナルの文章が入っているとすごく目立つのです。
当然そのオリジナルの文章に目を止めます。 

「この人とは一番仲が良かったから」という理由で代読する弔電が選ばれることもありますが
「この文章良いわね。お葬式で読んでもらいましょう」という理由で選ばれることも良くあるのです。

そしてその文章は遺族の心にずっと残るでしょう。
当然弔文が印刷された紙を手元においてくれるはずです。
これは送り主冥利に尽きるのではないでしょうか。

どの弔電を選ぶかということには個人や自分たちと送り主との関係性が当然重要視されますが、一方で文章の内容も大きく影響を与えているのです。 

電報3

実際の弔電の文章の書き方

ではここからは実際の文章の書き方を見ていきましょう。

おそらくこの記事をお読みの皆様が弔電を打つ場合、最初はインターネット上に掲載されている弔電の文例を参考にすると思います。

そして掲載された例文の多さに困惑するでしょう。
弔文でよく使われる言葉を順列組み合わせにしていることが多いためです。

私はこれまでお葬式の司会を1000件以上経験しているので何千通もの弔電を読み上げてきました。
選ばれている頻度の高い例文は
たとえばこんな文章です。
・○○様のご逝去を悼み、謹んでお悔やみ申し上げます。 
・○○様のご逝去の報に接し、謹んでお悔やみ申し上げます。 
・○○様のご逝去の報に接し、心から哀悼の意を捧げます。 
・○○様のご逝去の報に接し、心からお悔やみ申し上げます。 
・○○様のご逝去を悼み、謹んでお悔やみ申し上げますとともに、心からご冥福をお祈りいたします。 
・○○様のご生前のご厚情に深く感謝するとともに、心からご冥福をお祈り申し上げます
実は、以上の文章は社葬の場合など会社として弔電を送る場合はいいのですが、
個人で弔電を送る場合おすすめしない
文例なのです。

社葬の弔電というのは取引先に儀礼的に送る電報ですから文章の内容よりも、とりあえず弔電を送ったという事実の方が重視されます。
そのため文章は決まり文句で構成された極めてミニマムなものになりがちです。
NTTの場合は文字数が増えていくと弔電の料金も比例して上がってくので、もしかすると日常的に弔電を送っている総務部の人は短い方が得と判断している可能性もあります。

こういった1行の文章は、社葬の場合は構いませんが、個人葬や家族葬の場合そっけないという印象を与えます。
(本当に義理で弔電を送るのであればそれでもかまわないのですが)

そのため個人葬ではもう少し手の込んだ例文が使われます。
こんな文章です。  
○○様のご逝去の報に接し、心よりお悔やみ申しあげます。 
安らかにご永眠されますようお祈りいたします。 
  
○○様のご逝去の報に接し、謹んで哀悼の意を表します。 
故人が安らかにご永眠されますようお祈りいたします。 
 
○○様のご逝去の報に接し、謹んでお悔やみを申しあげます。 
ご冥福を心からお祈りいたします。 
  
突然の悲報に接し、驚いております。 
ご家族の皆様のご心情をお察しし、 
すぐにもお慰めに飛んでまいりたい気持ちですが、 
遥かな地よりご冥福をお祈りいたします。 
  
○○様のご逝去の報に接し、謹んで哀悼の意を表します。 
ご遺族皆様のお悲しみをお察し申しあげますとともに、 
故人が安らかにご永眠されますようお祈りいたします。 

以上が個人葬でその他大勢の方によく選ばれている文章です。
この中から

「○○様のご逝去の報に接し、謹んでお悔やみを申しあげます。 
ご冥福を心からお祈りいたします。」 

この定型文を例として取り上げます。
これにオリジナルな文章を挟んでみましょう。
 先ほど申し上げた通り、 冒頭と末尾はこの定型文を使って間にオリジナルの文章を入れていけばいいのです。
例えばこんなふうに。

故人が上司の場合

北原さんのご逝去の報に接し、謹んでお悔やみを申しあげます。 

駆け出しの頃よく北原さんには怒鳴られていました。
今でも彼のことを鬼軍曹だと思っている同僚も多いかもしれません。
でも私が心配事を抱えている時に誰よりも先に気付いてくれたのが北原さんでした。
今の仕事への転職を快く送り出してくれたのも北原さんでした。 
照れ屋で優しい彼のことをいつまでも忘れません。

ご冥福を心からお祈りいたします。 

故人が旧友の場合

山岸君のご逝去の報に接し、謹んでお悔やみを申しあげます。 

小学校の頃、彼は成績が悪かったので、出会ってからしばらく私には彼を軽んじていた頃がありました。
でも放課後誰も見ていないのに一人もくもくと教室を掃除している姿を目撃して以来、私が最も尊敬する人物になりました。
ずっと親友でいてくれてありがとう。 

山岸君のご冥福を心からお祈りいたします。 

故人が同僚の場合

西山君のご逝去の報に接し、謹んでお悔やみを申しあげます。 

10ヶ月前、彼から国際電話があり、それが最後の会話となりました。
私の誕生日を覚えてくれていたのです。
そんなやさしい彼に、結局恩返しができずじまいでした。
くやしいです。
帰国したら真っ先に御霊前にお伺いいたします。 

西山君のご冥福を心からお祈りいたします。 


いかがでしょうか?
ずっと心に残るのはこんなふうに
故人の人柄と、故人と自分の関係が伝わるエピソードが描かれた
文章です。
ここまで書いていいということを伝えるためにあえて長めの文章にしましたが
もう少し短くても全く構いません。

文字数制限は?

またネット系弔電会社の料金体系は、上限(VERY_CARD なら350字まで、ハート電報なら300字まで)を越えない限り何文字でも金額は変わらないところがほとんどです。
ちなみに上記の例文の文字数は冒頭末尾の定型文を入れて順番に189文字・168文字・152文字です。
NTTは文字数に比例して金額が上がっていく価格体系ですが、ネットで申込みをする人は高額なNTTにはそもそも頼まないでしょう。

故人の呼び方は?

マナー本には「ご尊父」だとか「ご令室」だとか続柄を表す敬語を使うよう書かれているかもしれません。
しかしこれまで申し上げてきた主旨や、お葬式が家族葬の普及でアットホーム化している傾向から、社葬や取引先ではない限り、例文で示したように名前で呼びかけてもかまいません。

文体は?

それからある程度親しい方に送る場合は、前後の文章が格調高い定型文なので、あえてオリジナルの文章を適度な口語感のあるやわらかな言葉にしても良いでしょう。
統一感が無くなると心配されるかもしれませんが、逆にオリジナル文章の親しみやすさが強調されます。

また書き上げたら一度声を出して読んでみてください。
それで違和感がなければ大丈夫です。

使っていけない言葉は?

この記事(弔電の安くて効果的な送り方を葬儀屋さんが教えます)の中でも申し上げましたが、「死」や繰り返しを暗示する忌み言葉に神経質になる必要はありません
また「永眠」「ご冥福」という単語は使って良いのかどうか、ネット上で質問されている方がいらっしゃいますが、気にする必要はありません。
それよりも素直に故人に対する気持ちを表現することに気を遣ってください。

 以上、弔電を送るときの参考になれば幸いです。
 

NG文例

最後におまけとして
電報会社のサイトに掲載されているけれど実際にこれは使わない方が・・・という弔電のNG文章の事例をあげてみます。
○○様のご逝去の報に接し、謹んでお悔やみ申し上げます。 
ご家族皆様のお悲しみ、ご落胆を思いますと、 
胸が張り裂けんばかりです。 
心からご冥福をお祈りいたします。 
 胸が張り裂けんばかり、という紋切り型で大げさな感情表現をそのまま使うのは嘘くさい印象を与えます。
聞き手の心を揺さぶる弔文というのは、むしろ感情をある程度抑制して、エピソードという事実に語らせる表現であることが多いです。
またこれは定型文として実際に弔電会社のサイトに載っているものなので、もし他の人が同じ文章で送っていたとしたら「寒い」ことになります。
突然の悲報に接し、呆然自失のありさまです。 
お元気だったころのお姿が目に浮かび、 
いまだに信じられません。 
 本当に呆然自失なら、弔電を申し込むどころではないだろうと意地悪な私は考えてしまいますが。 
○○さんのご逝去の報に接し、驚きを禁じ得ません。 
お二人のご傷心を思うと、涙がこぼれます。 
心から哀悼の意を表します。 
 驚きを禁じ得ないとか涙があふれるとか、これも感情表現オーバー型ですが、
さらに指摘するなら「ご傷心(ごしょうしん)」という表現。 
先ほど申し上げたように弔電はお葬式の中で代読される可能性があるので、耳から入ってもちゃんと漢字変換される言葉を選ぶべきです。
 いきなり「ごしょうしん」と言われても瞬間的には意味が分からないのではないでしょうか。
「 心の痛みを」という表現の方が耳から入っても理解しやすいと思います。
ご逝去を悼み、謹んでお悔やみ申しあげます。 
これからも御家族お力を合わせて、 
励ましあいながらこの度のご不幸を乗り越えられる事を 
心よりお祈りいたします。 

○○様がお亡くなりになられた悲しみは、 
計り知れないものとお察しいたします。 
どうぞお気を強くお持ちになってください。 
心よりご冥福をお祈り申し上げます。

余計なお世話系 、と言えばいいでしょうか。
お葬式で使ってはいけない言葉
という記事を書きましたが周囲が最もやってはいけないのが遺族に対する安易な励ましです。
厳しい言い方ですがこういう文章なら送らない方がマシでしょう。  
ご家族みなさまがおだやかな年末年始を過ごされますよう、 
心からお祈り申し上げます。
これも余計なお世話系、と言えるでしょう。
悪意はないのでしょうが大切な人が亡くなっているのにおだやかに過ごせなんて、そんなことを祈られる筋合いはない、という話です。  
天国にいってしまうのは寂しいけれど、 
ゆっくりと休んでください。 
そして私達みんなを見守っていてね。 
 天国という概念はキリスト教のものです。
そのため仏教や神道のお葬式で読み上げるのはふさわしくありません。
まれにキリスト教の葬儀でもないのに、ご遺族の方にこういった文章の弔電を選んでと頼まれることがあるので、その時はお坊さんに許可を取っています。 


<2017年11月25日>記載