映画「おくりびと」のヒットは総合的には葬儀業界にプラスになったと思います。

 

これで葬儀屋の志望者もふえるのでは、という声が周りで聞こえます。

しかし私は長期的には影響ないと思います。

 

まず納棺士という仕事を考えてみましょう。


そもそも、「おくりびと」で描かれる納棺のみを専門とする職業は、

なぜ生まれたのでしょうか。

 

納棺という作業だけを外部委託することは、

お客さんへの葬儀費用の請求額を増やすだけで、

本来意味のないことです。

オフィスで書類をシュレッダーするためだけのアルバイトを雇うことに意味がないように。

 

納棺も葬儀屋がやった方が、

業務の流れ的にも、遺族の安心感としても、コスト的にも、

優れていると思います。

そのため全国的には葬儀屋が納棺も執り行うケースが圧倒的に多いのです。

 

もちろん納棺を専門とする職業の方のスキルにはそれなりに敬意を払います。

しかしエンバーマー(エンバーミングをする人)ほどの専門知識や設備は必要としないはずです。

 

要は、葬儀屋にしてみれば、

衛生的にも日本の伝統的メンタリティである穢(けが)れ的にも、

嫌悪感のある仕事を他人に押しつけただけではないでしょうか。


遺族から余分なお金をもらって。

 

つまり納棺専業業者って無理矢理需要を発生させていると思うのです。

需要の発生のさせ方に無理がある以上、

納棺士への需要が爆発的に増えるとは思わないのです。

だから求人数も頭打ちになるのではないでしょうか。

 

では葬祭業全体ではどうでしょう。

 

この映画のヒットで葬儀業界が注目されることにはなるでしょう。

 

しかしこの映画で葬儀屋を志望する人は増えないのではないでしょうか。

五社英雄の映画がヒットしても売春婦になられる方は増えなかったでしょう。

映画の中でかっこいいと思うことと、

いざ自分や自分の身内がやるのとはまた次元の違う問題ではないかと思うのです。


日本人の根っこにある穢れの思想は、いざとなってみると、根強いのです。

 

また葬儀業界は、入りやすいが仕事が過酷ですぐやめてしまう人も多いのです。

 

残念ながら「おくりびと」のヒットは

長期的には葬儀業界の人材市場に影響を与えないと思います。

 

追記:私は葬儀屋として自分の職業に誇りを持っていますが、この文章で不愉快になった方がいらっしゃったらお詫び申し上げます。



<2009年03月06日>記載