前回葬儀は高いという問題と葬儀屋を嫌うという問題を深く考えてみる2/3では
葬儀の価格設定が、適切な程度を越えてしまうのは、
葬儀屋さんのモラルが低いという理由だけではなく
モラルの逸脱を許してしまう、商品特性によるものである
という話をしました。
その解説です。
グラフ
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ハーバード大学のデビッド・レイブソン(2003)は以下の3点を指摘しました。

商品が複雑であるほど、
消費者の価格に対する反応(価格弾力性)は小さくなり、
結果として高めの価格設定が行われる。

(価格弾力性とは価格を変動させたときの販売数量の変化率のことです。
商品の差異を意識しやすいものほど価格弾力性は高くなります。
例えば飲料会社の1社だけが自販機の缶コーヒーを、
中身はそのままで5%値上げしたら、
一気にその缶コーヒーは売れなくなるでしょう。
これは缶コーヒーが価格弾力性の高い商品だからです)。
葬儀という商品に対して、消費者は複雑であるという印象を持っています。
葬祭業を営むものにとっては、
葬儀の価格構成項目はそれほど複雑なものではありません。
しかし売り手と買い手の情報量に圧倒的な差があるため
(情報の非対称性といいます)
結果的に消費者は複雑であると感じます。
そのため
葬儀という商品の価格弾力性は低くなり、高めの価格設定が行われる

というわけです。

商品が複雑であるほど、市場に参入する企業数が増える一方で、
高めの価格は維持される。

これも葬儀業界に当てはまりますね。
新規参入者がたくさん入ってきて葬儀屋さんはいっぱいいるのに、
葬儀費用は高めの価格を維持していました。
最近はインターネットの登場で、
状況が変わってきましたけど。
その話はまたの機会に。

競争が激化するほど、企業は商品の複雑性を強める。
携帯電話も同じですが、
葬儀も○○プランなどを打ち出し葬儀屋ごとに異なる価格体系を作り出した結果、
消費者の方が比較するのは難しくなっています。
それでまた消費者は、複雑と感じてしまうのです。

つまり葬儀が高いのは葬儀屋が悪い奴だから、
ではなく複雑である葬儀という商品の特性がそもそもの原因
です。
その特性がモラルハザード(倫理の欠如)を起こしやすい葬儀業界の土壌を生んでいます。
グラフ
でも、もともと葬儀はそんなに複雑な商品ではありません。
複雑であると感じるのは、先ほど述べたように
情報の非対称性(売り手と買い手の情報量の差)が原因です。

ではなぜ情報の非対称性が発生するのかと言えば、
(ちょっときつい言い方ですが)
消費者の方の勉強不足が原因です。
参照ページ(なぜ葬儀屋は嫌われるのか 2/4

流れとしては
消費者の方の勉強不足が相対的に商品を複雑なものにする
→葬儀屋に高い価格設定を可能にさせる
→倫理観の無い人ほど
商品価値に見合わない高い価格設定を行えるので
儲け易い状況になる
→倫理観の無い人が葬儀業界に集まる
→消費者が被害を受ける
→消費者の葬儀屋に対する嫌悪感が強まる
という図式です。

複雑な商品を扱う業界は他にもあるのに、
なぜ葬儀業界はここまでひどくなるのでしょうか。

それは買い手が取引を降りることができないからです。

本当なら売り手と買い手の間の情報格差が激しいとマーケットは成立しません。
買い手(消費者)が取引を降りてしまいますから「市場の失敗」が起きます。
(もっと詳しく知りたい方はレモン市場の説明を参照)

でも葬儀という商品の購入を、誰も降りることはできません。
死ぬことを避けることはできないのと同じことです。
いやでも葬儀という商品を購入しないといけないのです。

消費者のイライラの原因はその辺りにあります。
その感情が最終的に葬儀屋嫌いに結びつく
のだと思います。

この問題を乗り越えるには、消費者が葬儀のことを勉強して、
賢い消費者になるしかありません。
最終的には「取引」に絶対参加しなければいけないのですから、
葬儀屋が悪い奴だから、と非難するだけで何も学ばないのでは
損をするだけです。
消費者が勉強する、それだけが悪い葬儀屋を減らす現実的な力になると思うのです。


<2009年05月21日>記載